紀伊山地の霊場と参詣道は紀伊山地の3つの霊場である熊野三山、高野山、吉野・大峯と霊場へ続く参詣道で構成されており、2004年7月7日に世界文化遺産の登録が決定しました。
和歌山県・奈良県・三重県にまたがっているため面積は495ヘクタールもあります。世界文化遺産についてや登録された理由、見どころをご紹介します。
紀伊山地の霊場と参詣道が登録された世界文化遺産とは
世界遺産登録年:2004年
登録基準
(ⅱ)建築や技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展において、ある期間または世界の文化圏内での重要な価値観の交流を示すもの
(ⅲ)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
(ⅳ)人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築様式、建築技術または科学技術の総合体、もしくは景観の顕著な見本
(ⅵ)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)
遺産概要
世界文化遺産に登録されるためには6つの登録基準のうち項目を1つ以上満たさなくてはなりません。
紀伊山地の霊場と参詣道は4つの項目で登録基準を満たしたため2004年に登録されることになりました。満たしたのは文化交流の跡・文化文明の証拠・重要な建築物や景観・出来事伝統関連の4つです。
紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産になった理由
紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産に登録された理由は、自然を神仏の宿る場所とする信仰が作った文化的景観を高く評価されたからです。
紀伊山地の山々は神様が宿る場所として昔から崇拝されており、険しい地形であることも影響して人々が入ることは容易ではありませんでした。
しかし仏教の影響を受けて自然にひそむ神秘的な力を手に入れるための山岳修行の場となり、参詣道を歩くことも修行の一部とされました。文化的景観以外に日本古来の神への信仰とインドから日本に伝来した仏教が結びついて独自の思想が生み出されたことも、東アジアの文化交流であるとして高く評価されています。
紀伊山地の霊場と参詣道の見どころ
霊場である熊野三山、高野山、吉野・大峯にはそれぞれ見どころがあります。参詣道とともに詳しく見どころを見ていきましょう。
紀伊山地の霊場と参詣道:熊野三山
熊野三山とは熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社・青岸渡寺の総称で、さらに那智大滝・那智原始林・補陀落山寺も熊野三山の一部です。神社や寺は一か所にまとまっているわけではなく、熊野参詣道によりつながっていますが20~40キロほど距離があるため電車やバスでの移動が一般的です。
紀伊山地の霊場と参詣道:高野山
高野山は弘法大師によって開かれました。山全体が金剛峯寺の聖域とされていて、山内には117の寺院が点在しています。金剛峯寺は真言密教の根本道場として816年に創建されています。
見どころはたくさんありますが中でも壇上伽藍と奥の院は点在する寺院の中心地とされています。壇上伽藍は弘法大師が住んでいたとされる御影堂があり、奥の院は弘法大師入定の地とされていて美しい参道を見ることができます。
高野山は一つの宗教都市となっているため1日で回りきるのは難しいです。じっくりと世界遺産を味わいたいのであれば宿坊に泊まることをおすすめします。日帰りで立ち寄る場合は路線バスを利用して効率よく回りましょう。
紀伊山地の霊場と参詣道:吉野・大峯
吉野・大峯は10世紀中頃には日本第一の霊山として中国にまで名が伝わるほど崇拝されていました。山岳信仰の対象でしたが後に役行者の聖地としても有名になります。
大峰山脈の北端部にあたる場所には桜の名所として名が知られている吉野山があります。他に吉野水分神社・金峰神社・吉水神社・金峰山寺・大峰山寺を合わせて吉野・大峯と呼んでいて、桜の時期になると多くの観光客がお花見と参拝に訪れます。
紀伊山地の霊場と参詣道:参詣道
参詣道には熊野三山に参詣する道である熊野参詣道、高野山に参詣する道である高野参詣道、熊野三山と吉野・大峯を結ぶ修行道の大峯奥駈道の3つがあります。
熊野参詣道には紀伊半島の西岸を進む紀路・紀伊半島の東岸を進む伊勢路・高野山と熊野三山を結ぶ小辺路の3つの経路が開かれました。経路が3つあるのは熊野三山が日本各地からアクセスしづらい場所であるため出発する場所に合わせて経路を選べるようにしたからです。
高野参詣道も同様の理由で経路が4つあります。1つ目は金剛峯寺北側の紀ノ川から高野山に至る京大坂道・黒河道等の経路、2つ目は吉野と高野山を結ぶ大峰道、3つ目は熊野参詣道中辺路方面と高野山を結ぶ小辺路・相浦道・龍神道等の経路、4つ目は場高野山を囲繞する女人道です。
大峯奥駈道は修験道の祖とされる役行者が拓いたという伝説があり、道の途中には行場が75ヵ所設けられています。中でも笙の窟、弥山、前鬼は重要な場所とされていて笙の窟は冬ごもりの洞窟、弥山は役行者修行の地、前鬼は山伏集落です。
まとめ
2004年に世界遺産に登録された紀伊山地の霊場と参詣道ですが、2016年に11ヘクタールの面積が追加で登録されています。追加されたのは熊野参詣道の阿須賀王子跡や高野参詣道の女人道などで、さらに見どころが増えることになりました。
自然崇拝の聖地である紀伊山地は神社や寺だけでなく雄大な自然も魅力の一つです。世界遺産に登録されている範囲はとても広いので、何回も訪れることをおすすめします。昔から信仰されてきた紀伊山地を存分に味わってください。